バイク乗りなら、一度は「ヒヤリ」とした経験があるのではないでしょうか。ヘルメットをシート下のメットインスペースにしまい、小物を整理して、何気なくシートを「バタン」と閉める。そして次の瞬間、全身の血の気が引く。バイクの鍵が、ヘルメットと一緒にシートの下に……。そう、多くのライダーが経験する悪夢、「メットインへのインロック」です。私もかつて、その悪夢を現実のものとしてしまった一人です。それは、ツーリング先の見知らぬパーキングエリアでのことでした。休憩を終え、さあ出発しようとヘルメットをしまい、お土産の袋を整理しているうちに、うっかりキーホルダーごとメットインに入れてしまったのです。シートを閉めた瞬間の、あの「カチャッ」という絶望的な音は今でも耳に残っています。スペアキーはもちろん自宅の机の上。周囲には頼れる人もいません。途方に暮れ、スマートフォンで「バイク メットイン 鍵閉じ込み」と検索。出てきたのは、鍵屋に依頼するという選択肢でした。すぐに電話をかけ、現在地を伝えると、「1時間ほどで到着できる」とのこと。その言葉に少しだけ安堵し、私は自動販売機のコーヒーを飲みながら、ただひたすら自分の不注意を呪いました。待つこと1時間、到着した鍵屋のスタッフは、私の免許証とバイクの書類で本人確認をすると、手際よく作業を始めました。彼は鍵穴に特殊な工具を差し込み、まるで鍵があるかのようにシリンダーを操作します。私は固唾をのんで見守りました。すると、わずか数分後、「カチッ」という小さな音とともに、いとも簡単にシートが開いたのです。メットインの中から無事に出てきた鍵を見た時の安堵感と、プロの技術に対する感動、そして安くない出費に対する苦笑いが入り混じった複雑な気持ちになったのを覚えています。この一件以来、私はバイクから離れる際は、どんなに短い時間でも必ず鍵をズボンのポケットに入れるという習慣を徹底しました。あの日の焦りと手痛い出費は、私にとって忘れられない安全運転の教訓となっています。
メットインに鍵を閉じ込めたあの日の焦り