親から譲り受けた、あるいは物置の奥から出てきた、年代物のダイヤル式金庫。その重厚な佇まいは頼もしい限りですが、古い金庫には特有のトラブルが潜んでいることが多く、開かなくなるリスクも高まっています。古いダイヤル式金庫が開かない場合、その原因は単なる番号忘れだけでなく、経年劣化による物理的な問題であることが少なくありません。最も一般的なのが、内部機構の潤滑油切れです。長年使われずに放置されていた金庫は、内部の精密な部品をスムーズに動かすための油が乾ききってしまい、部品同士が固着していることがあります。この状態では、たとえ正しい番号に合わせても、物理的に部品が動かないため解錠できません。また、湿気によるサビの発生も大きな原因です。特に、日本の気候では、適切な管理がされていないと金庫の内部でもサビが発生し、ダイヤルやデッドボルト(かんぬき)の動きを著しく妨げます。これらの潤滑油切れやサビによる固着が疑われる場合は、金庫の側面や扉の蝶番あたりをゴムハンマーなどで軽く叩き、内部に振動を与えることで、固着した部分が剥がれて動くようになることがあります。ただし、これはあくまで応急処置であり、根本的な解決にはなりません。もう一つ、古い金庫に多いのが「ダイヤルのズレ」です。長年の使用による摩耗で、ダイヤルを回す際の目盛りと、内部のディスクの位置に微妙な誤差が生じてしまうのです。この場合は、正しい番号の少し手前や、少し行き過ぎた位置で止めてみるなど、微調整を繰り返すことで開く可能性があります。しかし、これらの対処法を試しても開かない場合は、内部の部品が破損・摩耗している可能性が高いと言えます。古い金庫は、現在の製品とは構造が異なり、部品も手に入らないことがほとんどです。そのため、解錠や修理には非常に高度な知識と技術が要求されます。下手に自分で分解しようとすると、二度と元に戻せなくなるだけでなく、内部に仕掛けられたリロック装置(不正解錠を感知すると完全にロックする機構)が作動してしまう危険性もあります。古い金庫のトラブルは、迷わずアンティーク金庫の知識が豊富な専門業者に相談するのが、最も安全で確実な方法です。